ここ一年で、演奏家たちとは切っても切り離せない関係になってきたYouTube、僕の演奏動画も実はいくつかあげて頂いている。 数こそはまだ全然多くないのだが、投稿者様がそれぞれ別の方々だったり、団体だったりするため(自分で動画を投稿する覚悟はまだないようだ)、数日前に自分の演奏を集めたプレイリストなるものを作ってみた。
本記時投稿日現在、リスト内の動画は4つ。古い順に紹介していく。リスト自体は下記リンクよりご覧いただける。
https://m.youtube.com/playlist?list=PL8XT7InRITPMaylrBF8mHBZBSiWXzY8lQ
<受験講習会へ行こう!〜武蔵野音楽大学(2019年8月3日取材)>
https://youtu.be/HgE8DqvsMjM?list=PL8XT7InRITPMaylrBF8mHBZBSiWXzY8lQ
ONTOMO様による投稿。あの音楽之友社である。お察しの通り、僕のyoutubeデビューは、偶然音友様が取材に来られた時に、偶然僕が演奏してたことから起こったのである。抜かれているのは20秒程度。なんならこのリストを作るまでこの動画の存在は忘れていたのだが、動画と同時に、当時の自分を少し思い出すエピソードがあったのでリストに追加。
大学の広報の方からある日呼び出され、音友様のyoutubeに演奏を載せる許可を求められた僕は、どうせ一瞬抜かれるだけだろうとは察していながら内心は大喜びしていたわけだが、いざ確認にいった時は割りとしっかり「そこ選んだか」と突っ込んでしまった。リュエフのコンチェルティーノを全楽章演奏して、使用されたのは第一楽章の音数の少ない第二主題。渋いというか、なんというか。まぁしかしこれが僕のデビューだし、学生の自分は、しっかり楽しそうに吹いてるし、半分自虐ネタもこめて。
<【リモート演奏】日本歌曲メドレー Japanesesong medley >
https://youtu.be/-oxTZHbstlI?list=PL8XT7InRITPMaylrBF8mHBZBSiWXzY8lQ
僕の演奏環境が気になることだろうが、問題は今の自分がこの環境からまだ脱せていないことである。この曲自体は、ソプラノ歌手であり本動画の投稿者でもあるAnna Matsuda による編曲で、バリトン(歌)の山田が集めたメンバーでデイケア施設で演奏した際に作られたものである。2020年、一回めの緊急事態宣言の最中に、リモートで演奏しようと声がかかり、その時最高潮に心が荒んでいた自分は、家で楽器が吹けない事実もほぼ忘れ、大きな希望を抱き引き受けるのである。
<日本サクソフォーン協会新人演奏会2020 金澤ニコラス>
これに関してはここに書きたくても書けない話があまりに多い。そこまでブラックな話ではないので、もしどこかで僕に会える機会があったら是非聞いてほしい。とりあえずここでは書けるところまで。
この新人演奏会は、もちろん毎年開かれており、大学の卒業演奏会とともに「誰が乗るか」で学内が少々騒つく。(自分が勝手に騒いでるともいう。)しかし卒業手前の自分はいろいろと卑屈になっており、この演奏会に出ることへのモチベーションをあまり持てずにいた。もう少しだけ踏み込むと、「演奏会に出たい」「演奏したい」のではなく、「出られないと悔しい」だけなんじゃないかと、若干自己嫌悪に陥っていた。思えばタネも仕掛けもない「考えすぎ」である。後々、「自分の大好きな小品を人前で吹く機会を得たい」というモチベーションをもとに、無事推薦を頂く。当初はP.ボノーの<ワルツ形式によるカプリス>、E.ボザの<スカラムーシュ>、G.ピエルネの<カンツォネッタ>の三曲のプログラムを提出していた。しかし世間は空前の演奏会中止ブームが到来。書き方ほどおちゃらけたことではないので、この演奏会もやむなく中止に。ここで初めて、自分は案外純粋に人前で演奏したかったのだと思い知る。それだけにサクソフォーン協会から動画投稿の提案を頂いた時は、喜ぶまもなくピアニスト、大学、自分の師匠に連絡をした。こうして考えてみると、この動画は関わった全ての人から快いOKをもらえたことによる、ある種の奇跡だったりする。動画の内容が当初の演奏会で予定していたものと違うのは、単に投稿時さらっていた曲がソウゲだったのと、動画が残るとなると、この動画が一種の名刺的な役割を持つことになることを考えた時に、やはり一曲のまとまった曲の方が良いと考えたからである。ソウゲのソナチネは昔から大好きな曲だし、選曲自体に後悔はないが、やはりいつか当初のプログラムも演奏したいなぁとも思う。
<松乃会 壱 〜第弐夜〜 2nd. Night, MATSU-NO-KAI Vol.1 / ON-LINE CONCERT>
https://youtu.be/R1oh9vbMKyQ?list=PL8XT7InRITPMaylrBF8mHBZBSiWXzY8lQ
永井秀和作曲、角直之作詞の新作歌曲の収録。リモート演奏動画にも登場した松田晏菜の主催。本来サクソフォーンは他の楽器や、増してや歌とのアンサンブルのレパートリーが極めて少ないだけに、このような機会ほど嬉しいものはない。そしてさらに面白いのが、自分の音に歌詞がついていることがあること。歌曲のアレンジこそは過去にもやったことがあるが、器楽のために書かれたものに詞がついている(音程も言葉の抑揚と結びついている)のは当然ながら初めての経験となった。楽器でどこまで言葉を活かせらるか、完全な答えは勿論出なかったが、「歌」であることを噛み締めつつ、気持ちよく吹かせて頂いた。こういった試行錯誤はやはり楽しい。共演者の方々も、恐縮してしまうほどにビッグな方だっただけに、またの機会があればと願うばかりである。
僕自身はこの動画の後半の連作歌曲<白と黒と金>に出演する。前半の二重唱も、松乃会第一夜の各歌い手のソロも、とても素敵なのでぜひ聞いてほしい。
これからも、少しずつでも動画掲載の機会を頂ければ、ここで紹介していこうと思う。その時の心情なりなんなりを言葉で残してくのも面白いし、もしかしたら後々いい資料になるかもしれない。そして、いつか勇気を出して、自分で何か投稿してみたいとも、思っている。できるだろうか。
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